J GISで地域課題を探究する授業

※データの入手先を変えて検証したところ,表1「人口増減率の表」では データの欠損している町丁がありましたので訂正版をお示しします。

 ただし授業の進行には影響はありません。

 

 

 

  • 1 はじめに

  • 2 都道府県スケールの中からの課題発見

  • 3 地域課題の探究
    (1)要因の考察

  • (2)対象を絞る

  • (3)インターネット検索による情報補完

  • (4)課題の解決策の話し合い

  • 4 まとめ

1地域課題を探究しよう

今回は,2022年度に必履修となる地理総合の主旨に沿って,生徒がGISの地図を使い客観的な視点で地域課題を見つけ出し,探究し,持続可能な社会のために解決策を構想する授業案を考えた。

具体的には,Google EarthやMANDARAといった汎用ソフトで,公的機関のオープンデータから作ったGIS地図で,特定の都道府県の地域課題を探究させる授業を想定した。事例地域としたのは,もともと私があまり情報をもたない滋賀県である。それは既知の情報がなくても実践できる汎用性のあるGIS授業を考えたいと思ったためである。

なお授業で地図を生徒に提示する際は,プロジェクターを通してGoogle Earth上で生徒に示し,読み取らせる時は同じ地図を紙ベースにしたものを生徒に使わせる想定とした。Google Earthの活用を軸としたのは,それ自体が,断面図や3D地図の作成,shapefileの読み込み,住所情報からの地物の位置表示など近年機能が高度化し,MANDARAで作った地図でもkml形式で保存すれば容易に表示できること。また同じ範囲に様々な主題図を重ね合わせることで,GISの特長である「重ね合わせによる気付き」が期待できると思ったためである。

2 都道府県スケールの中からの課題発見

課題探究型の授業のためには,まず学習対象地域と,その地域での課題を客観的に見極めさせなければならない。私はまず政府統計e-statから得られる「国勢調査データ」からMANDARAで統計地図を作り,それを生徒に読み取らせて行わせる方法をとった。

まず授業の導入で私が,生徒に地域課題を考えさせる端緒として考えたのは,市町村別の人口分布図(図1)人口増減率の図(図2)である。人口関連の地図を導入に使おうと思ったのは,環境,エネルギー,過疎化,ゴミ処理,国際化の問題など多くの地域課題が,往々にして人口の多寡や増減を要因や背景にしているためである。

図1図2で生徒に読み取らせるのは,それほど複雑なことではない。「滋賀県北部では人口が比較的少なく,また人口減少が進んでいる。また南西部では県の人口の多くが集中し,人口増加も進んでいる」といった人口の数量的な分布と増減の傾向である。

      図1 滋賀県の市町村別人口分布(2015年)  図2 滋賀県の市町村別人口増減率(2015年)

         

そして次に読み取らせるのが,市町村別の老年人口率 (図3)外国人割合(図4)などの,人口の質的部分に関する地図である。

以上,4枚の地図の読み取りをさせるだけで,生徒たちは「滋賀県の北部で,高齢化と過疎化が同時に進むのはどうしてなのだろう。」,「南東部で人口増加が進んだり,外国人率が高くなるのはどうしてか。」「それによって地域にはどのような問題が起こっているのか。」といった,都道府県単位の課題設定を自然に行っていくのではないかと考える。これが授業の導入である。

         図3 滋賀県の老年人口率             図4 滋賀県の外国人割合

                    

 

【 Googlearthコンテンツの作り方@ 】

@統計データの入手

まず政府統計e-statのメインページを表示し,「統計データを探す」→「ファイルから探す」→「国勢調査」→「都道府県・市町村別統計表(男女別人口,年齢3区分・割合,就業者,昼間人口など)」とクリックを進めていき,そこで最新である平成27年度のファイルをダウンロードし,ファイルを開く。すると以下のようなファイルが表示される。

表示されたら,まず「滋賀県の市町村」の「行」だけ残して,あとは削除する。さらにデータ項目については,あとあと仕えそうなもの以外は削除する。なお市町村コードは絶対に削除してはならない。

また外国人割合はもとの統計表にはないが,表中の「人口総数」と「外国人(人口)」により算出可能なので,「外国人率」のデータ項目を新設しておく。これでデータの準備は完了である。

A境界データの入手

続いて,作図にあたり,境界データを入手する必要がある。境界データは,国土数値情報ダウンロードページの「行政区画」から滋賀県の行政区画(shapefile)を入手してそれをMANDARAで開く。そしてそれができたら下のAからCの順で作業を進めて,属性編集画面を出す。

A                     B                    C

 →      

この属性編集画面の左側にある「市町村コード」と,都道府県・市町村別統計表(男女別人口,年齢3区分・割合,就業者,昼間人口など)にある「市町村コード」は,並びが同じである。したがって,

したがって,この属性編集画面の右側に「列(データ項目)」を10列新設して,さきほどの加工したExcel表データをペーストしてやるとよい。

つまりまず,属性編集画面の中の「薄緑色の網掛け部分」にマウスポインタをおいて右クリックし,「データ項目数の指定」で「15」を入力する(もとの項目が5つだったため,+10で15)。

  

そして新設された「データ項目」のところに,加工Excel表のデータをペーストする。そしてそれが終わったら,右上にある「OKボタン」をクリックする。

これで行政境,人口,人口増減率(2010-2015),人口密度,老年人口率,外国人率などのデータが入ったMANDARA地図の基礎データができあがったことになる。

BGoogleEarthコンテンツを作成

次に上のMANDARAファイルをもとにして,GoogleEarth上で,一枚一枚を重ねて使うコンテンツの作成手順を紹介したい。

1)行政境

まずMANADARAのデータ項目の所で,市町村境の入った「N03-004」を選択して,描画開始ボタンをクリックする。そして左下のような地図が描画されたら,KML形式で保存をする。ファイル名は「市町村」などで十分だろう。ファイルを開くと,下の真ん中のような地図が描画される。そうしたら左のサイドバーにある「N03-004ファイル」をクリックすると現れる「オブジェクト名」と「凡例」を削除する。そして「N03-004ファイル」を再びクリックし,右クリックで「プロパティ」を選択する。

    

プロパティの所では,下のように「スタイル,色」シートを表示させ,右の「スタイルを共有」ボタンをクリックする。あとは例えば,直線の太さを2.0,範囲を色を白にして,「枠線」にするとGoogleEarthの行政境ファイルが完成である。

    

2)人口

続いて,MANDARAファイルの「総数(人口)」を選択し,「記号(図形表現図)」のところで円の内部をクリックする。さらにそこで表示された「記号設定」のウィンドウの中で色・模様の「内部」を選択。「ハッチ設定」のウィンドウとなるが,ここでは「ベタ塗り」で「色」を好きな色に設定する。そして「描画開始」ボタンをクリックして,またこれもkml形式で保存をする。ファイルを開くと,下の真ん中のような地図が描画される。そうしたら左のサイドバーにある「総数」をクリックすると現れる「オブジェクト名」を削除する。これで,市町村別人口のGoogleEarthファイルも完成である。なお人口分布図のコンテンツをGoogleEarth上で使うときは,一緒に「行政境」のコンテンツも一緒に表示する必要がある。

  → 

3)人口増減率

続いて,MANDARAファイルの「人口増減率けを選択し,「階級区分(コロプレスマップ)」のところを選択する。階級区分法については,度数分布を反映し,また階級ごとの「度数」に数のばらつきができるだけないように設定するが,よくわからない場合は「区分方法」を「標準偏差」で設定するとよい。ただここでは,自由設定にして,「境界値」を4,2,0,-2,-4に設定する。また色設定方法では「2色グラデーション」の設定にして,高位の数値のものを「青」,低位の数値のものを「赤」とした。最後に「描画開始ボタン」をクリックすると,下図のような地図が表示される。

 

さらに地図が表示された状態のままkml形式で地図を保存し,そのファイルを開くと下のようになる。あとは左のサイドバーにある「人口増減率」をクリックすると現れる「オブジェクト名」を削除する。これで,人口増減率のGoogleEarthファイルも完成である。

  

4)老年人口率や外国人率

なお老年人口率や外国人率のGoogleEarthコンテンツの作り方は,人口増減率のコンテンツと作り方と同じである。境界値の設定にあたっては図の数値を参考にしていただきたい。

3 地域課題の探究
(1)要因の考察

こうして課題設定をした後は,生徒にその要因や背景を考察させる。一般に過疎高齢化,人口増加の中の外国人率増加は,地形などの自然条件,製造業などの雇用機会,大都市との近接性,交通インフラの整備状況などの社会条件の影響を受ける。したがってここでは,そうした社会条件に関わる地図をなるべく沢山提示していく。つまり都道府県全域の地形景観を概観させるために,@市町村界が白線で入っただけの地図(図5)。交通インフラの様子を考察するために,A人口増減図に鉄道・道路を重ねた地図(図6)。製造業などの雇用機会との関係を考察するために,B人口増減率に工業用地を重ねた地図(図7)を提示する。

   図5 滋賀県の市町村境界   図6 滋賀県の鉄道・道路網  図7 滋賀県の工場用地

     

ここで生徒たちに読み取って欲しいのは,「県北部の過疎高齢化は,山がちで,交通の便の悪さ,周辺の京都市など大都市への近接性に恵まれていないこと。」とか,「県南西の人口増加と外国人率の上昇が並行して進んでいるのは,平坦な土地が広がり,安い労働賃金が求められる工業などの雇用機会に恵まれているため。交通インフラが発達し,大都市である京都市や大阪との近接性に恵まれているため。」といったことである。

【 Googlearthコンテンツの作り方A 】

 滋賀県の市町村境界

すでに前のページで作成した「行政境のコンテンツ」をGoogleEarthに単独で表示させて,使えばよい。

2 滋賀県の鉄道・道路網

 1)鉄道路線のコンテンツ作成

まず国土数値情報ダウンロードサービスの「JPGIS形式」の「GMLシェイプファイル」を選択し,その中から「鉄道」をみつけ,圧縮形式のファイルをダウンロードする。

データは日本全体のものしかないが,年次は最新年次のものとする。なおデータ入手のためのアンケートは必須である。

ファイルを解凍したら,GoogleEarthを起動させる。そうしたら上のツールバーの「ファイル」をクリックして,ファイル形式をESRI(シェイプファイル)に設定する。そして2つ表示されるファイルのうち 「RailroadSection」を開く。すると下のような「データインポート」というウィンドウが表示されるが,ここでは「すべてインポート」ボタンをクリックする。

すると「取得したアイテムにスタイルテンプレートを適用しますか」というウィンドウが表示されるが,ここでは「はい」をクリックする。

続いて「スタイルテンプレートオプション」ウィンドウが表示される。ここでは「新規テンプレート」を選択する。次の「名前フィールドを設定」ウィンドウでは任意のフィールド,たとえば「001」を設定する。

「テンプレートを保存」ウィンドウが表示されたら,「RailroadSection.kst」をクリックする。これで「鉄道路線のGoogleEarthコンテンツ」が完成である。ただしGoogleEarth左のサイドバーのコンテンツの所にチェックがはずれているので,そこにチェックを入れなければ表示されない。

コンテンツにチェックを入れると下図のようになる。

       

2) 人口増減率の図を重ねる + 道路網を重ねる

続いて,「鉄道コンテンツ」を表示させたままの状態で,前のページで作成した「人口増減率のコンテンツ」をGoogleEarthに表示する。すると「鉄道」と「人口増減率」のレイヤーが重なった状態で表示される。もし「鉄道」のラインの色が白で,目立たない場合は,サイドバーの鉄道コンテンツの所にマウンポインタをおいて,「右クリック」→「プロパティ」→でできた小ウィンドウで「スタイル・色」のシートを指定し,そこで色を指定すればよい。

あとは「道路網」を重ねるだけであるが,これはGoogleEarthの標準機能で道路網を表示させるところがあるので,それを利用する。つまりGoogleEarthの左のサイドバーの下にある「レイヤー」の

「道路」にチェックをいれる。すると下図のようになる。

なお「道路」と「人口増減率」のコンテンツはそれぞれ,サイドバーに別々に表示されているが,これらをワンセットのコンテンツとして保存するときは,「新規にフォルダを追加」し,その中に2つのコンテンツをドラッグして入れていけば,よい。もちろんそれは保存する。

3 滋賀県の工業用地

1)工業用地のコンテンツ作成

ここでもまず国土数値情報ダウンロードサービスの「JPGIS形式」の「GMLシェイプファイル」を選択し,その中から「工業用地」をみつけ,圧縮形式のファイルをダウンロードする。

データは都道府県にまたがるパネル単位となるが,滋賀県の場合は2つのパネルのダウンロードが必要となる。年次はなるべく新しいほうがいいが,平成21年のものである。

ファイルを解凍したら,GoogleEarthを起動させる。そうしたら上のツールバーの「ファイル」をクリックして,ファイル形式をESRI(シェイプファイル)に設定する。そして2つのシェイプファイルを開く。2つのshapefileは一つずつ処理する必要があるが,処理内容は「道路コンテンツ」を作るときと同じである。つまりまずshapefileを開こうとすると,最初に下のような「データインポート」というウィンドウが表示されるが,ここでは「すべてインポート」ボタンをクリックする。

また次に「取得したアイテムにスタイルテンプレートを適用しますか」というウィンドウが表示されるが,ここでは「はい」をクリックする。

続いて「スタイルテンプレートオプション」ウィンドウが表示される。ここでは「新規テンプレート」を選択する。次の「名前フィールドを設定」ウィンドウでは任意のフィールド,たとえば「001」を設定する。

ウィンドウが表示されたら,表示されたものをクリックする。こうした作業をすすめていくと,「工業用地のGoogleEarthコンテンツ」のもとが完成である。ここまでいったら次にGoogleEarth左のサイドバーのコンテンツの所にチェックを入れる。

あとは,色の調整である。これについてはGoogleEarthのサイドバーの2つのコンテンツを1つに組み合わせておいたほうが都合がよい。

つまり2つのうち一つのコンテンツをクリックすると,入れ子状に「同じ名前のフォルダ」が現れるが,それをもう一方のコンテンツの所にドラッグして移動させる。

 この状態に→ 

「工業用地」の色の設定は,下のようにサイドバーのプロパティの所で行えばよい。これでコンテンツもほぼ完成であるが,あとはファイルをまとめておいたコンテンツの名前を「工業用地」などにして,保存しておく。そしてデスクトップ上のコンテンツは削除しておく。

    

2)人口増減率を重ねる

あとは,改めて「人口増加率コンテンツ」,「工業用地コンテンツ」の順でGoogleEarthで読み込めば,「人口増減率を背景図とした工業用地のマップ」の完成である。

もちろんマップが完成したら,改めて「人口増減率+工業用地」などの名前で,2つのコンテンツを組み合わせたものを保存しておくとよい。

(2)対象を絞る

都道府県単位で課題の要因や背景が考察できたら次は,考察対象を都道府県単位から市町村単位へ,さらには町丁などの小地域にスケールダウンし,生徒たちが等身大で考察・検討ができる具体地域にまで絞る必要がある。たとえば滋賀県北部の考察の場合では,以下のように対象を絞る。

@小地域の絞り込み

まずあらかじめ生徒に滋賀県の市町村名の入った白地図を配布しておき,改めて図2図3を読み取らせ,人口増減率が低位で,老年人口率が高位となる市町村を特定させる。図からは,2010年から2015年の人口増減率が−4%未満で,2015年の老年人口率が30%以上となる高島市が抽出されるはずである。

さらにその高島市について,政府統計e-statで小地域単位の国勢調査結果をExcel形式で入手し,その加工した表から,やはり人口増減率が低位で,老人人口率が高位の町丁を絞り込ませる。高島市の中では,2010年から2015年の人口増減率が-30%以上で,老人人口率が80%以上となる,朽木能家(くつきのうげ) 地区が抽出できるはずである(表1)。もちろんここでも小地域別の統計地図を使って絞り込みが行わせるのが理想ではあるが(図8,図9),作図作業は少し煩雑なため,この表を使った方法がより合理的と考える。

考察対象を小地域に絞ったらまずは, e-stat「地図でみる統計(統計GIS)」から入手した小地域境界データで作った地図で生徒全員に,地区の地図上の位置を確認する(図10)

表1 小地域単位で対象地域を絞る(上位10位までの町丁で検討) 

※月報に掲載した表1については,人口増減率のデータからいくつかの町丁が欠損しておりました。正しくは,右下のような表となります。なお授業全体の流れには家京はありません。

  【誤り(人口増減の表×)】                                     【表1を訂正したもの〇】

     

図8 高島市の人口増減率     図9 高島市の老年人口率      図10 朽木能家地区

  

【 統計データ(表1)の作成 】

1)人口増減率

e-stat「地図でみる統計(統計GIS)」では,小地域(町丁単位)の「境界データ」と「統計データ」の両方が入手できる。表1の右データは,このうちの「統計データ」から入手したものである。つまりまず「統計データダウンロード」の「国勢調査」→「2015年」→「小地域(町丁・字等別)」→「年齢(5歳階級、4区分)別、男女別人口」とメニューをすすめ,「滋賀県のcsv」をダウンロードする。同じように「2010」年の「男女別人口総数及び世帯総数」もダウン―ドする。ダウンロードした2つのファイルは解凍する。

  

ダウンロードした「2010年と2015年の2つのファイル」は,csvといいながら,テキストファイルである。したがってそれぞれ,Excelを起動させて,「テキストファイル」形式でファイルを開く。さらにこのときは,「テキストファイルウィザード」で書式を設定する必要があるが,「区切りの文字」を「カンマ」に設定する必要がある。

   → 

次いで2つのファイルを「Excelファイル」として保存し,表中の「CITYNAME」の項目について,「高島市」以外の行をすべてカットする。 つまり「高島市だけの表」とする。

 

さらに2つのファイルについてそれぞれ,列について「CITYNAME(市町村)」「NAME(町丁)」「人口総数」以外をカットする。そして,2つを一つのシートに統合して,「2010年」と「2015年」の数値もとに求めた「人口増減率」の項目を新設する。

2010年                   2015年                統合

 → 

あとは,人口減少率が高いものから順にソードして,表の体裁を整えればよい。

【 小地域の位置図のGoogleEarthコンテンツ(図10)の作り方 】

2)老年人口率 

e-stat「地図でみる統計(統計GIS)」では,小地域(町丁単位)の「境界データ」と「統計データ」の両方が入手できる。表1のようなデータは,このうちの「統計データ」から入手したものである。つまりまず「統計データダウンロード」の「国勢調査」→「2015年」→「小地域(町丁・字等別)」→「年齢(5歳階級、4区分)別、男女別人口」とメニューをすすめ,「滋賀県のcsv」をダウンロードする。

 → 

ダウンロードされるファイルは,csvといいながら,テキストファイルである。したがって,Excelを起動させて,「テキストファイル」形式でファイルを開く必要がある。さらにこのときは,「テキストファイルウィザード」で書式を設定する必要があるが,「区切りの文字」を「カンマ」に設定する必要がある。

   → 

次いでファイルを「Excelファイル」として保存し,表中の「CITYNAME」の項目について,「高島市」以外の行をすべてカットする。 つまり「高島市だけの表」とする。

さらに列でも,「CITYNAME(市町村)」「NAME(町丁)」「総数、年齢「不詳」含む」「総数65歳以上」以外をカットする。そして,「総数、年齢「不詳」含む」と「総数65歳以上」もとに求めた「老年人口率」の項目を新設する。

   

あとは,老年人口率の数値でソードして,表の体裁を整えればよい。

【 小地域の位置図のGoogleEarthコンテンツ(図10)の作り方 】

e-stat「地図でみる統計(統計GIS)」では,小地域(町丁単位)の「境界データ」も入手できる。まず「境界データダウンロード」の「小地域」→「国勢調査」→「2015年」→「小地域(町丁・字等別)」→「世界測地系緯度経度(kml形式)」→「滋賀県」→「高島市」とメニューをすすめ,ファイルをダウンロードする。ファイルをダウンロードしたら,それをGoogleEarthで開く。すると左下のような地図が描画される。それぞれの町丁は赤線で囲まれているが,それぞれの中をクリックするとその「町丁名」などが表示される。朽木能家地区はこれで探してもよい。

 

なお線種を変えたり,朽木能家だけを違う線種にしたい場合,サイドバーのコンテンツのところでコンテンツを「右クリック」→「プロパティ」→「スタイル・色」で修正する。

A朽木能家地区の考察と問題の推察

そしてその後は, GoogleEarthで対象地域をクローズアップして,鳥瞰イメージを見せる(図11)。ここで断面図や,フライトシミュレーターを見せるなどすれば,さらに土地景観の視覚的理解が期待できるだろう。周りを山にかこまれた「山村」「山間地」といった読み取りは可能であろう。

図11 地区の景観

 

【 GoogleEarthで地域を鳥瞰させるときのポイント 】

GoogleEarthで地域を鳥瞰させるときのポイントとしては,サイドバーの「レイヤ」の一番下にある「地形」の所にチェックをいれるという点である。あとは,パソコンの「Shift+Ctrl+Alt」を同時に押したまま,マウスを操作すれば地域を俯瞰する角度なども調整できる。

そして次はいよいよ,地域が抱える現実の問題に迫れるような統計地図をなるべく多く提示し,生徒に「どのような問題があるのか」の検討を促す。国土交通省の国土数値情報のデータでも実に様々な地図が作成可能であるので,その活用がおすすめである。バスの平日の一日当たりの運行本数(図12)などの交通インフラ情報,医療機関 (図13),燃料補給所(図14),工業用地(図15)の位置情報。さらに過疎高齢化地域では,自然災害への脆弱さも予測できるので, 雪崩発生区域(図17)や土砂災害危険区域(図18),洪水時浸水予想区域といった自然災害リスクの関連地図も提示できるとよい。なおタウンページのデータを使えば,コンビニ・スーパーの分布図(図16)などさらに地域の生活に直接結びつく地図も作図できる。

図12 バスの平日の一日当たりの運行本数(国土数値情報より)                図13 医療機関の位置(国土数値情報より)

  

図14 燃料補給所(ガソリンスタンド)の位置(国土数値情報より)               図15 工業用地の位置(国土数値情報より)       

 

図16 雪崩の発生場所(国土数値情報より)  図17 土砂災害危険箇所(国土数値情報より)   図18 コンビニ・スーパーの分布図(iタウンページの住所データより)

  

【 地域が抱える現実の問題に迫る統計地図コンテンツの作り方 】

ここで作成したGoogleEarthコンテンツはすべてオープンデータのshapefileから作っているが図12〜図17のデータの入手先とその処理方法は,以下のとおりである。

 ・図12・・・国土数値情報ダウンロードサービスで「バスルート」を入手し,それをMANDARAで読み込み,「004」のところで下のように一日のバスの運行本数の階級区分を行って地図化。

        それをGoogleEarth形式で保存。

 ・図13・・・国土数値情報ダウンロードサービスで「医療機関」を入手し,そのshapefileを直接GoogleEarthで読み込み,GoogleEarth上で,マーカーの色・大きさなどを調整する。

 ・図14 ・・・国土数値情報ダウンロードサービスで「燃料補給所(ガソリンスタンド)」を入手し,そのshapefileを直接GoogleEarthで読み込み,GoogleEarth上で,マーカーの色・大きさなどを調整す        る。

 ・図15・・・図7でこのコンテンツはすでに作ってあるので,マーカーの大きさや色を,小地域のスケールに合わせて調整するだけでよい。

 ・図16・図17・・・国土数値情報ダウンロードサービスで「豪雪地帯データ」「土砂災害危険箇所」をそれぞれ入手し,そのshapefileを直接GoogleEarthで読み込み,GoogleEarth上で,マーカーの色            ・大きさなどを調整する。

これらの地図から,生徒たちは,

1)山間地にあり外部との交通アクセスが悪く,高齢で自動車運転ができない人が多いため,他地域との交流が困難である。

2)近隣に医療機関がほとんどなく,急病人・怪我人が出たときの対応が難しい。

3)付近にガソリンスタンド,食料品・日用品を購入するためのコンビニ・スーパーなどがなく生活が不便である。

4)雇用機会を生み出す工場が付近になく,大都市も近くになく,若い人が定着しない。

5)土砂災害と雪崩発生のリスクが高く,それらが発生したら集落内の道路が寸断され,集落は孤立するだろう。

といった様々な問題点を推察してくれるだろう 。

(3)インターネット検索による情報補完

こうした考察結果を検証させるためには,もちろん生徒たちの考察を,現実と照らし合わせることが必要である。もちろん現地調査が理想だが,統計で極端な値をもつ地域は,マスコミによって何らかの記事にされていたり,地域で奮闘する方々がネットで情報発信している例が多い。そこで私は,授業の中や宿題などで,生徒たちに,対象地域をインターネット検索させてはどうかと考える。例えば,「朽木能家」で検索すると地区全体にかかわる内容もあるが,以下のような記事が見つかる。

1)地域の自然破壊を憂慮した人々が「巨木と水源の郷をまもる会」を作っている。

2)地区のバス利用者の外出目的は、通院目的の比率が大きい。

3)地区では,十数年前から地元の子供がいなくなり、山村留学を受け入れ存続している。

4)2018年9月台風21号の被害で,地区の山間部では、集落が孤立した。

5)一時行われなくなった隣接地区・朽木古屋の六斎念仏踊りが2016年に復活した。

6)地区で唯一の診療所では,様々な工夫をして運営している。

このように,サイト検索では1)3)6)の記事にあるように,自然破壊,学校施設の維持,伝統文化の継承など,統計からでは読み取れない問題も見出すこともできる。このサイト検索は,現実の調査が難しい学校現場において,机上の課題探究をより現実に近づけるための有用な手立てである。

(4)課題の解決策の話し合い

サイト検索のあとは,生徒たちに再度地域の問題点を改めて整理させ,それらの問題点の解決や対処の方法を構想させたい。

この授業の最後の話し合い活動で肝心なのは,過疎・高齢化から派生する様々な問題点への短期的な対応と,問題の根底にある人口減少に対する長期的な対応の両方を話合わせることである。何事も問題解決には長期と,短期の両方の対策が必要である。

話し合いは,それを通して地域の人々の苦悩,苦労,困難を知ることが主旨なので,オープンエンドとなる。最後,こうした問題は全国でみられる普遍的な問題であることを確認し,授業を締めくくるとよいと考える。

4 まとめ

今回は,都道府県規模の地域課題を探究することを目的とした授業を想定している。おそらく同じような授業は,どの都道府県でも実践可能である。

まだWebGISなどの環境が整備されていないため,もしかしたら「簡単」というほどではないかもしれない。

しかし近年,公共機関の提供する国内のオープンデータが相当程度充実し,汎用のGISソフトの高機能化が劇的に進んできているため,作業が容易になってきているのは確かである。

先生方も是非,こうした追い風を利用して是非,一緒に,「GISで」学ばせる授業にトライしましょう。

 
 

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