Eハザードマップを作図して使おう
 

 

 

河口慧海 (1866-1945年)

河口 慧海は、黄檗宗の僧侶。仏教学者にして探検家。幼名を定治郎という。僧名は慧海仁広。 中国や日本に伝承されている漢語に音訳された仏典に疑問をおぼえ、仏陀本来の教えの意味が分かる物を求めて、梵語の原典とチベット語訳の仏典入手を決意。日本人として初めてチベットへの入国を果たした。 ウィキペディア

  • 1 ハザードマップを作図して使おう

  • 2 都道府県のハザードマップ

  • 2作図@

  • 2作図A

  • 2作図B

  • 2作図C

  • 2作図D

  • 3 身近な地域を考察させる地図

1 ハザードマップを作図し使おう

 2011年の東日本大震災以来,日本では,津波,洪水,土砂災害,火山噴火など様々な自然災害への危機意識が高まってきています。それとともに,私たち地理教員が授業で,ハザードマップなどを使って生徒たちに防災や減災を考えさせることの教育的意義も大きくなっています。ただしハザードマップを活用した学習が重視されるようになったといっても,そこで求められているのは単に教科書や資料集にのっている事例地域のマップを使い,事例学習さえ行えばそれでよいということではありません。生徒の生命と安全を直接守ることに直結する,具体的な「身近な地域のハザードマップ」を読み取らせ,考察させることが重視されてきているのです。

 つまり海岸地域では津波や高潮の発生リスクが高くなっています。また周囲に海のない内陸地域ではむしろ洪水発生と土砂災害発生のリスクが高くなります。さらに活動レベルの高い火山が近くにあれば,火山噴火の発生リスクが高くなっています。そして自然災害が起こった時の被害の大きさや質,対応は,道路・鉄道のインフラの整備状況,住宅の密集状況,地域の年齢構成などにより変わってきます。人口や家屋の密集地域では,災害規模が大きくなるリスクがあります。高齢者人口率が高い地域では,逃げ遅れによる被災者の発生リスクも高くなります。そうした現実を考えると,私たち地理教員は,自分の所属する学校の実情を考慮して,努めて身近な地域のハザードマップなどの素材を用意していく必要があるのだといえます。
多くの地域が現在では,自治体単位で,特定の自然災害リスクに焦点をあてたハザードマップを紙ベースで作り公開しています。津波(図1),火山噴火(図2),洪水・土砂災害(図3)の被害想定範囲と避難場所をまとめたものです。それの多くは現在,インターネットを介してpdf形式でダウンロードできます。したがってそれらを入手して授業に使うのも一つの方法です。ただそうしたマップは,情報過多の傾向があり,また様々な縮尺レベルで考察が行える二次加工が難しいものが多くなっています。

図1 東京都港区芝地区津波ハザードマップ 

図2 阿蘇山火山防災ハザードマップ

図3 長野県須坂市洪水・土砂災害ハザードマップ

 そこで今回は,汎用GISのMANDARAとオープンデータ(国土数値情報や基盤地図情報)などを使って作る,教材化しやすいハザードマップを作る方法とその活用法をご紹介したいと思います。

2 都道府県のハザードマップの作図と活用 

 私は生徒に行わせるハザードマップの考察では,マクロスケールからミクロスケールへと段階を追って探究を進めさせるのが「地理的考察」の王道です。ですから最初は都道府県スケールのようなマクロスケールの地域を取り上げたほうがよいと考えます。

 まず都道府県スケールの考察からはじめる場合には,事前に@地形概観図(地形・水系)がわかる地図,A洪水のリスクの広がりがわかる地図,B土砂災害発生のリスクの広がりがわかる地図,C津波発生リスクの広がりがわかる地図(海岸沿いの地域のみ),D地震発生リスクの広がりがわかる地図,E活火山の分布図,などが分かる地図の準備が必要です。このうち@の地形概観図は,有償データの「数値地図50mメッシュ(標高)」の等高線情報 (http://net.jmc.or.jp/searchDigiMap_5mDemEx.asp)や,国土数値情報(http://nlftp.mlit.go.jp/ksj/index.html)のうち特定の都道府県の「河川データ(shapefile)」をMANDARAで図化して結合させることで作図できます(図4)。ただ@のような地図は,インターネットで,「群馬県 地形」といった語句で検索すれば意外と容易に入手することもできます。ですからGIS初心者の先生方は無理をせず,そうした地図を活用するとするので十分です(図5)

図4 都道府県スケールの地形概観マップ@ 図5 都道府県スケールの地形概観マップA

 

国土数値情報(http://nlftp.mlit.go.jp/ksj/)のうちの「行政区画」データと 「水系」のMANDARAでそれぞれ図化し,それらを結合させたもの。

   

http://file.blog.fc2.com/jomokrtphoto/20161226a/05_gunma-ken-chikeizu.gifによる

 一方A〜Eのような地図については,MANDARA上で複数のデータ(すべてshapefile)をいっぺんに読み込んで,一つずつ線種や色などを調整して作ります。つまり国土数値情報の中の「行政区画」,「土砂災害危険箇所」,「浸水想定区域」,「津波浸水想定区域(必要な場合)」 ,「J-SHIS地震ハザードステーション(http://www.j-shis.bosai.go.jp/map/JSHIS2/download.html?lang=jp)の確率論的地震動予測地図の地図データ」,永村恭介氏の個人サイトである「Jank Boxhttp://giswin.geo.tsukuba.ac.jp/sis/students/eikyo/jank.htmlの日本の活火山shp」をいっぺんに読み込んで,加工処理します。ただし「津波浸水想定区域」はデータを公開していない都道府県もあるので,その場合はペーパーベースの自治体発行の地図で代用します。MANDARAの作業画面でそれぞれのデータを調整して,「複数のレイヤ」が準備できたところで,それらを組合せた地図が作れるようになります。基本的には,「行政区画」とその他のデータの画像をMANDARA上で結合させて地図を作ります(図7,図8,図9,図10,図11,図,図12)。ただし最後にすべてのデータの画像を重ねた図13のような地図も作っておきます。

 なおここ部分の作図手順は,次の「2の作図手順」にまとめておきますのでそれらを見ながら作図をしていただければと思います。


 実際の授業では,まず初めに図4図5のような地形概観図を生徒に提示して,等高線や水系の様子から自分の暮らす都道府県で発生リスクが高い自然災害の種類や,その広がりを予想させます(図6)。そしてその後,現実の自然災害リスクを,図7〜図12の地図を提示して確認させます。最後にすべての自然災害リスクが表示された図13を生徒に提示して,自分の暮らす都道府県の自然災害リスクの全体像を把握させます。生徒は「自分の暮らす都道府県について,安全な場所はないのだなあ」などといったことを客観的に認識できるはずです。なお授業形態としては,グループ学習などがよいと考えます。

図6 生徒の自然災害リスクの考察イメージ

図7 土砂災害のリスクのイメージ

  図8 洪水リスクのイメージ

 

     

   

国土数値情報(http://nlftp.mlit.go.jp/ksj/)のうちの「行政区画」データと 「土砂災害危険箇所」データをMANDARAでそれぞれ図化し,二次加工の上でそれらを結合させたもの。

国土数値情報(http://nlftp.mlit.go.jp/ksj/)のうちの「行政区画」データと 「浸水想定区域」」データをMANDARAでそれぞれ図化し,二次加工の上でそれらを結合させたもの。

 図9 津波リスクのイメージ

  図10 地震災害リスクのイメージ

 図11 火山噴火リスクのある活火山イメージ

国土数値情報(http://nlftp.mlit.go.jp/ksj/)のうちの「行政区画」データと 「津波浸水想定区域」データをMANDARAでそれぞれ図化し,二次加工の上でそれらを結合させたもの。

 

国土数値情報(http://nlftp.mlit.go.jp/ksj/)のうちの「行政区画」データ「J-SHIS地震ハザードステーションの確立論的地震動予測地図の地図データ(shapefile)」をMANDARAでそれぞれ図化し,二次加工の上でそれらを結合させたもの。

 

国土数値情報(http://nlftp.mlit.go.jp/ksj/)のうちの「行政区画」データと永村恭介氏の個人サイトであるJankBoxhttp://giswin.geo.tsukuba.ac.jp/sis/students/eikyo/jank.htmlの「日本の活火山shp」をMANDARAでそれぞれ図化し,二次加工の上でそれらを結合させたもの。

図12 すべての自然災害リスクを重ねたイメージ

1 下準備

(1)ソフトの入手
 作図にはまず「2つのソフトと2つのデータ」が必要である。まずソフトとしては汎用GISソフトMANDARAである。

 

1.ソフトのうちMANDARAは,名前で検索して公式サイトにアクセスすれば入手できる。まずそれをパソコンにインストールしてほしい。

2.また基本地図ビューアーも,「基盤地図情報ダウンロードサービス―国土地理院」というサイトの,初期画面一番下の「表示ソフトウェア」で入手できる。入手した圧縮ファイルをPCのデスクトップにダウンロードして解凍すると,フォルダの中に「Fgdv.exe」というアイコンがある。このアイコンのショートカットもデスクトップに作ってほしい。

2 下準備

 続いてデータの入手である。

(2)国土数値情報の入手

1.国土数値情報ダウンロードサービスへのアクセス

次に所属校がある都道府県の自然災害関連の地図データも入手する。つまり最初に「国土数値情報ダウンロードサービス」のサイトを表示させ,メイン画面を表示させる。そして「データ形式」の一番左「JPGIS2.1」をクリックする。

 

2.「行政区画」と「災害・防災データ」の入手

表示されたページ下を見ると,「行政区域」という項目と,<災害・防災>所に「洪水時浸水想定区域」と「土砂災害危険箇所」「津波浸水想定区域」という項目がある。それらのデータをすべてダウンロードする。

データはすべて都道府県単位の指定である。データを選択する時には,当然,「地図の範囲」が属する都道府県名を選択し,画面右の「次へ」のボタンをクリックする。

すると,「アンケートのご協力のお願い」への回答画面,「データのダウンロード(4.国土数値情報利用約款)」への同意画面が次々と表示されるが,そこでの回答と同意を終えるとようやくダウンロードとなる。

ここで「ダウンロード」ボタンを押す。

ダウンロードが終わったら,「圧縮ファイル」はすべて解凍しておく。ここで表示されるファイル名の「A26-10_●●_GML」の「●●」は都道府県番号である。左のファイルでは群馬県の番号「10」が使われているが,他の都道府県の場合は当然違った番号となる。

2 下準備

 続いてデータの中でも,「国土数値情報」の所にはないものを入手する。

 ※可能であれば地形概観図を背景に置けるとよいので,有償データの「数値地図50mメッシュ(標高)」の等高線情報 (http://net.jmc.or.jp/searchDigiMap_5mDemEx.asp)や,国土数値情報(http://nlftp.mlit.go.jp/ksj/index.html)のうち特定の都道府県の「河川データ(shapefile)」が入手できるとよい。ただしそれが難しければなくてもよい。

(2)その他の自然災害リスクのデータを入手する

1 地震リスクのデータを入手する

 まずは防災科学技術研究所の「J-SHIS地震ハザードステーション」で「確率論的地震動予測地図の地図データ」を入手する。つまりここをクリックして左のようなページが表示された所で,左の「項目」のデータ種類のうち「確率論的地震動予測地図」→「地図データ」を選択する。

 さらに右側の地図上でデータを入手したい区域のパネルを選択して,その上の「地図データ」というところで,「圧縮形式―zip」,「ファイルフォーマット―シェープファイル」,「データ範囲―一次メッシュ」,「基準年―2017(例)」,「確率ケース―平均」と設定して,最後に「ダウンロード開始」ボタンをクリックする。

 すると下の様な圧縮ファイルが入手できる。やはり解凍しておくが中にはshapeファイルが確認できる。

       

2 活火山の位置データを入手する

 続いて永村恭介氏の個人サイトであるJank Boxの「日本の活火山shp(ポイント)」を入手する。ここでは左図の様な「日本の活火山ポイントshp(ポイント)」の部分をクリックするだけである。下の様な圧縮ファイルが入手できる。やはり解凍しておくが中にはshapeファイルが確認できる。

  

3  MANDARA上で地図上の表示設定(下ごしらえ)

 続いてすべてのshapefileデータ(必要に応じて)を,MANDARAで読み込み,それぞれの「地図データの表示設定」をする。以下は,群馬県を例にその手順を紹介したい。

1 すべてのshapefileをMANDARAで読み込み,調整を行う

 まずMANDARAを起動させて,「ファイル→シェイプファイル→シェイプファイル読み込み」とクリックをすすめていき,先程ダウンロードしたshapefileデータをすべて読み込む。すると時間がかかるが読み込みが完了する。

(1)「等高線」と「水系」のデータを反映させる場合(※参考)

 前述したようなデータが必要となるが,私の場合,都道府県サイズの地図を作る時には,等高線は500mで,オブジェクトサイズは0.05,色は黄土色などににする。また水系はオブジェクトサイズは0.1,色は明るい水色などににする。サイズと色の設定はあくまでも私の主観である。

(2)行政区域

対象レイヤを「N03-16_10_160101 shp」に設定し,データ項目は「N03-004」を選ぶ。画面上には市町村名が示されているが,その凡例はすべて「白」に設定する。


(3)土砂災害危険箇所
次に対象レイヤを「A26-10-10-SedimentDisasterAreaSurface」に設定し,データ項目は「A26-001」を選ぶ。画面上には1〜6で様々な危険箇所のタイプが示されているが,生徒にそうした読み取りはできないので,ここでも色は,全てオレンジにする。

(4)洪水時浸水想定区域
続いて対象レイヤ「A31-12-10」に設定し,データ項目は「A31-001」を選ぶ。ダウンロードサイトの途中にもデータの凡例がでているが,「001」は,洪水時の浸水の深さを表す。凡例12が50cm〜1m,13が1〜2m,14が2m〜を示す。色設定は,50cm以上を浸水と考えて,ここでは全て水色にする。

(3)火山噴火リスク(活火山の分布)
次に対象レイヤを「volcano108.shp」に設定し,データ項目は「NAMEJ」を選ぶ。画面左には日本の108の活火山の名称が表示されるが,表示記号設定は規定記号のうち「△」とし,内部の色を「黄緑色」にする。

 

※ここのファイルで表示される活火山については,網羅的にはいっている。しかし1983年以降活動的でハザードマップかせつくられている活火山については分布は,火山ハザードマップデータベースkmlファイル(GoogleEarth形式)がより詳しいのでそちらをご確認いただきたい。

 

 

(4)地震発生リスク

地震発生リスクの関係のものについては,「P-Y2016-MAP-AVR-TTL_MTTL-SHAPE-5438」,「P-Y2016-MAP-AVR-TTL_MTTL-SHAPE-5439」,「P-Y2016-MAP-AVR-TTL_MTTL-SHAPE-5538」,「P-Y2016-MAP-AVR-TTL_MTTL-SHAPE-5539」のレイヤがワンセットである。

まずは対象レイヤを「P-Y2016-MAP-AVR-TTL_MTTL-SHAPE-5438」に設定し,データ項目は下のコード表の中の自分が地図化したい属性名を選ぶ。ここでは30年間で震度5弱以上となる確率を地図化することとして「T30_I45PS」を選ぶ。すると画面は,コロプレスマップの設定画面になるが,「分割数」と「境界値」,「凡例の色分け」はすべて他のレイヤと同様になるように注意が必要である。この場合は,「分割数」を5,境界値は0.8,0.7,0.6,0.5,凡例の色は「赤色から白色のグラデーション」とした。数値は%単位である。

ここでの数値は,小さな値の場合が多いので,「相対的な地震リスクの地域差」などを示すものとして考えるとよい。

       

 なお残りの「P-Y2016-MAP-AVR-TTL_MTTL-SHAPE-5439」,「P-Y2016-MAP-AVR-TTL_MTTL-SHAPE-5538」,「P-Y2016-MAP-AVR-TTL_MTTL-SHAPE-5539」のレイヤについても全く同じ処理をする。

(5)最後に,行政界以外の地図レイヤの枠線を非表示にする

 そして最後に,行政境以外の枠線を非表示にしておく。任意の「対象レイヤ」を選択して,「描画開始」ボタンをクリック。表示された地図の上にあるツールバー「オプション」で,「線種ライン設定」を選択しその小ウィンドウで,行政境「N03-16_10_160101 shp」以外の線種をすべて「透明」にする。

 

 

 それが終わったら,対象レイヤを「N03-16_10_160101 shp」に設定し,表示は「ハッチ」を選ぶ。そしてその横の凡例のパターンをすべて「空白」に設定する。

これで地図をつくるための素材「地図レイヤ」はすべて完成である。

4 地図の完成

 地図は,前の段階で作成した「地図レイヤ」を複数重ね合わせることで作図できる。

(1)土砂災害危険箇所の地図作り

まずこの地図をつくる場合,MANDARAの「重ね合わせ表示」のタブ→「データセット追加」をクリックする。そしてタイトルに「土砂災害危険箇所」と入力する。

そうしたら再び「データ表示」のタブをクリックして,対象レイヤは「N03-16_10_160101 shp(行政界)」を選択し,画面右上の「重ね合わせセット」ボタンをクリックする。そして次に,対象レイヤは「A26-10-10-SedimentDisasterAreaSurface」を選択し,画面右上の「重ね合わせセット」ボタンをクリックする。

そして以上の作業が終わったら改めて,「重ね合わせ表示」のタブをクリックし,画面最上部の「描画開始」をクリックすると完成図が表示される。

地図上の方位記号,スケール,凡例などを消したい場合は,描画された画面上の「オプション」→「オプション」の所で,その設定をするとよい。

なお左上画面の「重ね合わせデータ」の所には,レイヤ名が表示されているが,下にあるものは,地図上ではより上層のレイヤとなる。そのレイヤの重なりの上限関係を調整したい場合は,その下の矢印で調整ができる。

 

 

 

 

(2)洪水浸水リスクの地図づくり

次にこの地図をつくる場合,MANDARAの「重ね合わせ表示」のタブ→「データセット追加」をクリックする。そしてタイトルに「洪水浸水リスク」と入力する。

そうしたら再び同じ作業の繰り返しである。「データ表示」のタブをクリックして,対象レイヤは「N03-16_10_160101 shp(行政界)」を選択し,画面右上の「重ね合わせセット」ボタンをクリックする。そして次に,対象レイヤは「A31-12_10_GML」を選択し,画面右上の「重ね合わせセット」ボタンをクリックする。

あとは,「重ね合わせ表示」のタブをクリックし,さらに画面最上部の「描画開始」をクリックすると完成図が表示される。

(3)火山噴火リスクの地図(活火山分布図)づくり

次にこの地図をつくる場合,MANDARAの「重ね合わせ表示」のタブ→「データセット追加」をクリックする。そしてタイトルに「活火山」と入力する。

そうしたら再び同じ作業の繰り返しである。「データ表示」のタブをクリックして,対象レイヤは「N03-16_10_160101 shp(行政界)」を選択し,画面右上の「重ね合わせセット」ボタンをクリックする。そして次に,対象レイヤは「volcano108.shp」を選択し,画面右上の「重ね合わせセット」ボタンをクリックする。

あとは,「重ね合わせ表示」のタブをクリックし,さらに画面最上部の「描画開始」をクリックすると完成図が表示される。

 

(4 )地震発生リスクの地図づくり

次にこの地図をつくる場合,MANDARAの「重ね合わせ表示」のタブ→「データセット追加」をクリックする。そしてタイトルに「地震」と入力する。

そうしたらここでも再び同じ作業の繰り返しである。「データ表示」のタブをクリックして,対象レイヤは「N03-16_10_160101 shp(行政界)」を選択し,画面右上の「重ね合わせセット」ボタンをクリックする。そして次に,対象レイヤ地震関係のレイヤのすべて(P-Y2016-MAP-AVR-TTL_MTTL-SHAPE-5438,P-Y2016-MAP-AVR-TTL_MTTL-SHAPE-5439,P-Y2016-MAP-AVR-TTL_MTTL-SHAPE-5538,P-Y2016-MAP-AVR-TTL_MTTL-SHAPE-5539)を選択し,それぞれ画面右上の「重ね合わせセット」ボタンをクリックする。

あとは,「重ね合わせ表示」のタブをクリックし,さらに画面最上部の「描画開始」をクリックすると完成図が表示される。

(5)すべての自然災害リスクを結合させた地図づくり

最後にこの地図をつくる場合,MANDARAの「重ね合わせ表示」のタブ→「データセット追加」をクリックする。そしてタイトルに「全部」と入力する。

そうしたらここではを用意したすべての地図レイヤを重ね合わせ設定して,描画させる。

最後にレイヤの上下の位置関係を調整していくと,左の様な地図が描画できる。

5 身近な地域を考察させる地図の作図と活用
 続く授業では,生徒達に「身近な地域」を考察させますが,はじめに「学校を中心とした少し広い範囲」,次に「学校を中心とした狭い範囲」へと段階を踏んで対象地域を絞り込んでいきます。
この時使う地図の作図でも,ソフトは基本的にはMANDARAを中心に使います。ただしここでは,データは国土地理院の「国土数値情報」だけでなく,「基盤地図情報」というデータを多用します。そしてここでも,都道府県単位の地図を作るときにやったのと同じように,MANDARA上で複数のデータをいっぺんに読み込んで,それらを一つずつ線種や色などを調整して「様々な地図レイヤ」を作ります。つまり (1)で使ったすべての国土数値情報の中のデータ,基盤地図情報の@等高線,A水域・水涯線,B行政境国土数値情報のうち学校のデータと,基盤地図情報のうち@等高線,A水域・水涯線,B行政境,C道路縁,D建物,D軌道の中心線(鉄道),E道路縁,F避難場所などのshapefileをすべていっぺんにMANDARAで読み込みます。その後,MANDARAの作業画面でそれぞれのデータを調整して,「複数のレイヤ」を準備し,それらを組合せて教材用の地図を作ります。

 なおこの場面の作図手順,とくに基盤地図情報の扱いについては,基盤地図情報のダウンロードサービスがリニューアルして仕様が若干変わったものの,基本的にはGEOLINKの「地理屋のスキルノート」にある,演習・大縮尺の地図を作ろうにある通りである。国土数値情報の扱いについては,基本的に「2作図@〜D」と同じである。それらを参考にしてただきたい(群馬県を事例にしているため,津波のハザードマップの作り方についてはのっていません.あくまでも基本的な作図手順について載せています.)。

@「学校を中心とした少し広い範囲」の地図の作図と活用
 「学校を含む少し広い範囲」を考察させる場合,まずは地域の地形特徴と自然災害リスクとの相関を生徒に考察させます。そのため地図としては,国土数値情報のうち学校のデータと,基盤地図情報のうち@等高線,A水域・水涯線,B行政境の「地図レイヤ」を演習・大縮尺の地図を作ろうの要領でMANDARA上で結合させた図13のような地図を使います。

 こうした地図を考察して行く際,基本的な小地形についての知識があれば,地図上の等高線や水系の様子を見れば,対象地域に発達する小地形について,生徒達は「ここは扇状地」,「ここは氾濫原」,「ここは谷底平野」といった読み取りができるはずです。生徒にそうした読み取りが難しい状況があれば,その時は教師が補足をします。もちろん,その延長線上では,生徒にはそれぞれの小地形からイメージできる自然災害リスクを考えさせます。「扇状地は土砂災害リスクが高い」,「氾濫原は洪水リスクが高い」,「谷底平野は土砂災害と洪水リスクが高い」といったことをイメージさせます。しかし必ず実際の自然災害リスクを生徒に提示する必要があります。現実の自然災害リスクは地域の特殊な地形条件などから,教科書にある傾向道理にはなっていないことがあるからです。ですから,図13の地図を作ったときに使った「地図レイヤ」だけでなく,そこに「土砂災害危険箇所」,「浸水想定区域」,「津波浸水想定区域」,「確率論的地震動予測地図のデータ」,「活火山」などの自然災害関係のレイヤを重ねた図14のような地図も用意しておき,生徒に示す必要があります。こうした一連の考察作業を行わせることで,生徒は自分たちの学校周辺の小地形と自然災害リスクの特色を概観することができます。たとえば図15にある桐生女子高校については,所在地は谷底平野で,河川の氾濫による洪水リスクと,山側の土砂災害リスクの両方をもっていることが特徴であるといったことを理解します。

図13 等高線と水系ののった地図のイメージ

図14 学校周辺地域の自然災害リスクのイメージ

基盤地図情報の行政区界,等高線,水域,水涯線,学校のデータをMANDARAで読み込んで地図化し,結合したもの。このように学校の位置ポイントをMANDARAの表示記号設定で「文」の設定にして地図に反映させるなどのアレンジを加えてもよい。

図13で使った基盤地図情報の地図データに加え,国土数値情報の「土砂災害危険箇所」,「浸水想定区域」もMANDARAで一緒に読み込んで地図化し,結合したもの。海岸地域では,国土数値情報の「津波浸水想定区域(データがある場合)」なども表示させる必要がある。

A「学校を中心とした狭い範囲」の地図の作図と活用
 最後,授業では,「学校を中心とした狭い範囲」の自然災害リスクと危険箇所を認識させ,災害に襲われたときの具体的な行動を生徒に考えさせます。そのため地図の範囲は,建物や道路などがはっきり表示されるような範囲に設定します。当然,生徒の様々な作業用として「地図のベースマップ」を用意しておきます。つまり@等高線,A水域・水涯線,B行政境,C道路縁,D建物,D軌道の中心線(鉄道),E道路縁など基盤地図情報から作った「地図レイヤ」が全て結合させた図15のような地図です。

 このベースマップの読みとりからもより詳細な自然災害リスクの予想をさせるなどの授業展開は可能です。
 

 そして図15の「地図レイヤ」にさらに,自分の授業の中で考えさせたい自然災害リスクの「地図レイヤ」などを重ねて,図16図17,図18のような地図を作ります。そうすることで「下校時間,台風などの影響で土砂災害や洪水被害が起こったときにどうするか」→「学校を含めた三階建て以上の鉄筋の建物に一時避難させてもらう」とか,「巨大地震が襲ってきたときにどこにどんな危険があるか」→「住宅密集地で建物・電信柱倒壊が起こり,道路が不通となる」「上流のダムサイトが決壊して洪水が起こる」とか,「避難場所の安全性についての検証をしよう」といった,様々なケースについての対応や,従来の防災体制の検証をさせるような授業展開が可能となります。

図15 学校を中心とした狭い範囲のベースマップ

図16 土砂災害危険箇所,洪水浸水区域の地図

図17今後30年間に起こる震度5弱地震の発生確率

                               図18 避難場所の位置

 GISは,以上のようにすごく簡単というわけではありません。「難しい」と感じる先生方もいるかもしれません。ただ生徒に防災,減災を教える道具としては非常に魅力的な道具です。全体としては複雑な作業のように見えるのですが,一つ一つの作業については意外と単純です。是非,最初は見よう見まねでよいので,GISに挑戦してみてください。

 実はMANDARAを使ったハザードマップ作りはGISの入門的なものです。

 フリーソフトのQGISというソフトを使うとさらに,地理院地図を背景画像として組み込んでハザードマップが作れるため,より従前の地形図学習のようなイメージでハザードマップの学習ができます。現在,そのハザードマップの作成手順をまとめていますが,後日このサイトで紹介しますので,是非ご覧ください。

 

 

 

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