H時差計算を教える工夫1

    

 

  • ライブ中継で世界との時間共有を実感

  • GE地図で時間設定の基本ルールを理解

  • 日本の時刻表示の特殊性を確認

  • 基本的な時間の置き換えスキルを教える

  • タイムゾーンの更新情報を確認

1 世界の時間設定のルールを教える

(1)ライブ中継で世界との時間共有を実感

 時差計算は,国際化時代を生き抜く上での重要なスキルの一つである。したがってその必要性を生徒に認識させるにはまず,世界で様々な時間が同時進行で進んでいる現実に気付かせる必要がある。今では「EarthCam」「WorldWebCam」「WebCamGarore」「WebWorldCam」「RealtimeCameraParadise」「leonardsworlds.com」などのポータルサイトから世界中の様々なライブ中継にアクセスが可能である。たとえばこのライブ中継を教室内の大スクリーンに投影させ,見せることで,私は生徒に世界との時間共有をリアルに感じることができると考える。こうしたサイトの活用によって,教室内でICT機器を使い世界各地の(誰もが知っている)ランドマーク的な場所のライブ中継ができれば,生徒への視覚的インパクトも期待できる。学校ごとのインターネットの接続スピードなどによって,このサイトの使い勝手は左右されるところもあるが,たいていは少しだけ待っていれば,サイトへの接続もうまくいくと思われる。また諸外国のライブ中継をする場合には,事前に授業で使う時間帯などをチェックしておかないと,映し出された画像が真黒ということもある。事前の下調べが必須である。

@Earth Camによるライブ中継を活用する

 EarthCamとは,アメリカにある同名の企業が作る,世界で最も人気のあるウェブカメラのネットワークサイトである。

★Earth Cam地図検索 ここから検索できる。

ニューヨークのタイムズスクウェア

ニューヨークの自由の女神

ラスベガス

ハワイ・マイアミ

エッフェル塔

ロンドン

東京

 

Aその他のライブ中継を活用する

 その他にも,とくに海外サイトには有用な「ライブ映像のポータルサイト」がいくつか散見されるので,是非,ご活用いただきたい。

worldwebcams

国内サイトである。比較的検索しやすい。ただしリンク切れなどもあるので,注意が必要である。

【活用の仕方】

まずメイン画面の下にある上のようなList1〜List8のうちいずれかを選択する。

すると,アイウエオ順でライブ画像のリストが表示される。あとは,そこから自分のみたいものを選択するとよい。

これは,このサイトにリンクが貼られているパナマ運河のライブ映像である。

WebCamGarore

バーチャル海外旅行のために作られたサイトで,世界各地のライブ中継のリンク集になっている。やはり英文サイトであるが,Google翻訳で日本語訳しながら見ていけば,使用にはとくに支障はない。地域別,テーマ別などからライブ動画サイトの検索ができるが,ここから,地域別の検索ページにリンクしている。

地域別検索

テーマ別検索

アムステルダムの町並み

アメリカ,アジア,ヨーロッパなど地域名で検索できる,地域別検索もある。

テーマ別では,21項目からの検索が可能である。

たとえばテーマ別検索の「町並み」を選択して,そこからアムステルダムを選択すると,上のようなライブ映像が見られる。

WebWorldCam

※上の地図の地域名をクリックすると,地域別一覧のページにリンクします。

世界各国,各地の名称,景色のライブ映像が見られるポータルサイトである。メインメイン画面(日本語表示可能)は,左のようにキーワードでライブ画像の検索ができるようになっている。とくに「景観 ウェブカム」という所の画像が豊富である。

【活用の仕方】

まずメイン画面の任意のキーワードをクリックする。すると,国別に整理されたライブ画像の一覧が表示される(英文)。自分がみたいライブ画像があったら,その名称の部分をクリックする。

ライブ画像の名称をクリックした時に表示されるのは,上のような地図とライフ画像のタイトルである。このページが表示されたら,ライブ画像の「タイトル名」をクリックする。

すると,しばらくしてライブ動画が表示される。上の動画は,ギリシャのミロノス島のライブ映像である。

RealtimeCameraParadise


ライブ映像のポータルサイトとしては,歴史のあるものらしい。下のような項目についてライブ動画のサイトへのリンクが貼りついている。

WildWebライブカム ヨーロッパ ドイツ
米国東部 米国西部 カナダ
オセアニア アジア その他の国
サテライト ウェブ動物園 テーマカム

leonardsworlds.com

1995年からの歴史をもつ世界のライブ中継のポタールサイトである。やはり英文サイトであるが,下のような多くのテーマで検索できるようになっている。

世界中のウェブカメラ 米国ウェブカメラ 空港のウェブカメラ
動物のウェブカメラ 首都ウェブカメラ 大学のウェブカメラ
クルーズ船のウェブカメラ クールなウェブカメラ グローバルウェブカメラツアー
ホットサイト メトロシティウェブカメラ 国立公園のウェブカメラ
ポート市ウェブカメラ 衛星&スペースビュー スキー/マウンテンウェブカメラ
スタジアム&野球場 トラフィック/ハイウェイカメラ 路面電車&トロリーウェブ
ストーム&ハリケーン 電車&鉄道ウェブ 火山のウェブカメラ

(2)GE地図で時間設定の基本ルールを理解

 時差計算の学習に入る前には,世界の時間設定の「基本ルール」を理解させる必要もある。つまり@地球が球体で,24時間で西から東に自転しているために世界各地の標準時のおおよそが,本初子午線を基点に経度が15度離れるごとに1時間の時差がつくよう,東の方が進んだ時刻になるよう設定されていること。A一方で実際のタイムゾーンは,国ごとの事情を反映して複雑な実態になっていること。B世界の時間設定の基準が本初子午線が通るイギリスのグリニッジを基準して設定されていることなどを理解させる必要がある。私は,この時,生徒の理解を支援するツールとしては,BARNABUというサイトで無料入手できるGoogle Earth形式のタイムゾーン地図が有用であると考える。地図を教室の大型スクリーンに投影させ,西から東に回転して見せることで,生徒には基本ルールを「自転する地球のイメージ」の中で視覚的に理解させることができる。また回転させながら,インドや中華人民共和国などの特徴的なタイムゾーンに注目させることで,「天体としての地球の特性」に背くタイムゾーンが多い実態も理解させることができる。

 

1)GoogleEarthの通常機能で,本初子午線の位置を確認させる。

2)アメリカ合衆国本土のタイムゾーンをとらえさせる。

まずGoogleEarthの左にあるサイドバーのレイヤの「国名や地名」にチェックを入れて,国境線を表示させる。

アメリカ合衆国のあたりをクローズアップして生徒に見せる。

Google Earth形式のタイムゾーン地図を表示させて,同じ場所を見せる。これによってアメリカ合衆国の国土が東西に広がっているために,複数のタイムゾーンを活用していることを読み取らせる。

3)中華人民共和国のタイムゾーンをとらえさせる。

まずGoogleEarthの左にあるサイドバーのレイヤの「国名や地名」にチェックを入れて,国境線を表示させる。

中華人民共和国のあたりをクローズアップして生徒に見せる。

Google Earth形式のタイムゾーン地図を表示させて,同じ場所を見せる。これによって中華人民共和国が「経線15度につき1時間の時差という基本ルール」を破り(実際は地方時間の使用という実態もある),単一のタイムゾーンしかもたないことを簡潔に読み取らせることができる。

(3)日本の時刻表示の特殊性を確認

@太政官布告によって定義される日本の時刻
時差計算の学習に導入部分で,生徒に確認したい点としては,「日本の時刻表示の特殊性」もある。 時差計算の授業を長年やっていると,多くの先生方が,「正午」と「深夜12時」はどちらが午前12時で,どちらが午後12時かという疑問に突き当たるはずである。実は今の日本の時刻表示を決めているのは,明治5(1872)年11月9日付 太政官布告第337号で,これによれば「正午=午前12時」,「夜中の12時=午後12時」が法律的には正しい。ただこの法律は「夜中の12時」には「午前0時」の別名も併記されているが,「正午」には「午後0時」の別名が記載されていない。そのため独立行政法人情報通信研究機構や,国立天文台は,「午前12時=午後0時,午後12時=午前0時との考え方で統一するのが良いのではなかろうか」と政府系機関としての見解まで出している。わたしは時差計算の学習をさせる上での興味付けとして,こうした資料や公式見解を生徒に提示することも,有用なことであると考える。

A日本の時刻設定の特殊性
 実は,正午についての解釈は,日本と英米式の解釈は違う。つまり英米式のAM12時は,深夜0時あるいは日本の午後12時と同じである,英米式のPM12時は,正午あるいは日本の午前12時と同じである。現在,日本で家電製品やパソコン,Excelなどに使われているデジタル表示は,製品の海外輸出などに対応できるよう英米式にしている。そのため,「日本の公式見解」と異なる「間違った表示」になっている。この点も,時差計算の学習などの時に,触れておくとよいかと思われる。英米式で12時間表示で時間を表すときも正午は「12時」だが,正午12時は「午後」であるとの認識から「PM12時」の表示になるのだという。結論としては,時差計算は「24時間表示の時刻」で教えないと,こうした矛盾にずっと神経を擦り減らされることになる。 したがって,私は「時差計算」の授業を行うときは,「英米式の時間と,日本式の時間との相関表」をエクセルなどで作ったものを示した上で,臨むとよいと考える。また可能な限り24時間表示の時間で,授業を進めるとよいと考える。

※私の作った日本式と英米式の相関表については,下の図を右クリック→保存でダウンロードしてください。なおEXCEL版はここから,PDF版はここからダウンロードできます。

2 基本的な時間の置き換えスキルを教える

(1)2つの都市の地方標準時を確認

2つの都市間の時間の置き換えでは,はじめに2都市の地方標準時を確認させるのが基本である。実はこの点を対話型授業で教える時も,前述のGEマップが支援ツールとして有用である。

まず生徒に,2都市の地方標準時を地図帳のタイムゾーン地図で調べさせ,その結果を発表させる。

たとえば,前橋の時間をホノルル時間に変えさせるときは,「前橋(日本)はUTC+9,ホノルル(アメリカ合衆国)はUTC−10です」といったことを,地図帳のタイムゾーンマップで確認させる。

そのとき教師がスクリーン上のGoogle Earth形式のタイムゾーン地図で該当の都市付近をクリックすれば,瞬時に正しい地方標準時が表示され,その正否が生徒全員の目で確かめられる。このGE地図には,地方標準時がサマータイムを反映していない欠点もあるが,教師が下調べをしていれば,その場でサマータイム時間に直すことは容易である。

 

(2)2つの都市の時間の関係性を確認

そのあと生徒には,北極側から地球全体を見降ろした地図の簡単な略地図(円)の中に作業線やテキストを書き込ませる。つまりそれによって2つの時間の関係性を可視化して,その図の判読から,@2都市の「時差」と,A「どちらの時間が進んでいるか,遅れているか」を確認させる。

 左のような図を作図させる時,わたしはまずは前述したGoogle Earth形式のタイムゾーン地図を見せることが必要だと考える。GE地図を北極点を中心とした向きに傾けて見せることで,球面上の世界に配置されているタイムゾーンの関係が,北極点側から俯瞰することで容易にとらえられるのだという視点を生徒に与えることができるからである。

 GE地図によって,この作図のコンセプトを生徒に理解させられたら,あとは「図」の中に,北極点側から見下ろした2つの都市のタイムゾーンの基準線を,「ライン」で描かせる。そして近くに「前橋(日本)GMT+9」,「ホノルル(アメリカ)GMT−10」といった2つの都市の地方標準時を書きこませる。またこのとき,世界の時間設定の基準となっているグリニッジ標準時(正確にはUTC)の基準線たる本初子午線も「ライン」で書きこませ,近くにその標準時GMT(UTC)を書かせる。

 それができたら,まずは2つの都市の時差を考えさせるが,左図のように「本初子午線」をまたいだ「矢印」を2つの都市の間に描かせていく中で,考えさせていく。つまりそうした作図の中で,まず2つの都市の地方標準時が,それぞれGMTに対して,どのような時差があるのかを考えさせて,それからそれぞれの時差の合計が,2つの時差の合計であることを考えさせる。たとえば,まず日本はGMT(UTC)よりも9時間進んでいる。一方,ホノルルはGMT(UTC)よりも10時間遅れていることを確認させる。そして9時間+10時間の19時間が,日本とホノルルの時差であることを算出させる。

 あとは,どちらの都市の時間が進んでいるのか,遅れているのかを確認しなければならないが,これについては,「GMT(UTC)±○○」で表される2つの都市の地方標準時について,「GMT(UTC)±○○」のGMT(UTC)の後ろにくる数字の大小によって,簡単に判別することができる。たとえば「前橋(日本)はGMT+9」,「ホノルル(アメリカ)はGMT−10」なので,ホノルルの方が遅れていると生徒に読み取らせればよい。

結論としては,「ホノルルは前橋よりも19時間進んだ時刻を採用している」ということになる。

(3)時計の文字盤のイメージで時間の置き換え

「時間の関係性についての情報」が確認できたら,あとは生徒に最終的な時間の置き換えをさせるだけである。ただし12進法あるいは24進法の時間計算は,意外と計算ミスを起こしやすい。したがって生徒には「アナログ時計の文字盤のイメージ」を想像させたり,紙に書かせていくとよい。この点,教師が「考え方」を説明する際の支援ツールとして,時計の針を自在に操れるアナログ時計のオンラインツールもある。ただしこのツールは英米式なので注意が必要である。

たとえば前橋時間の午前0時39分を,ホノルル時間に置き換える場合,まずこの時計の針をアニメーション下の「1minute(1分)」,「15minutes(15分)」,「30minutes(30分)」,「1hour(1時間)」と表記してあるすぐ下の+,−のボタンをクリックして,時計合わせを行う。かりにリアルタイムの時間にあわせたい場合は,パソコンをオンラインにした上で,アニメーション右下の「Current time!」をクリックすればよい。

置き換えを行う元の時間の設定が終わったら,あとは先の作業で確認した「2つの都市の時間の関係性」をみながら,アニメーション上の時計の針を遅らせたり,勧めたりすればよいだけである。たとえば前橋時間を,19時間おくれているホノルル時間に置き換える場合は,「1hour(1時間)」下のマイナスボタンを19回クリックすればよいだけである。

この作業を行うと,前橋時間の午前0時39分は,ホノルル時間の午前4時39分ということになる。

 なおこの時刻が,同じ日程かどうかの判断は,時間を戻すときに,時計の短針が「午後12時(AM12時)=深夜0時」をまたいだら,前日になるのだと生徒に教えるとよい。また「午前12時(PM12時)=正午」をまたいだら,午前になるだけと教えるとよい。

 また時間を進めるときには,時計の短針が「午後12時(AM12時)=深夜0時」をまたいだら,翌日の午前になるのだと生徒に教えるとよい。また「午前12時(PM12時)=正午」をまたいだら,同じ日の午後になるだけと教えるとよい。

(4)タイムゾーンの更新情報を確認

 また時差計算の授業の中で注意しなくてはいけない点として,地図帳のタイムゾーンの図が,絶対的なものではないという点である。地図帳は第二の教科書だからといって,信じきってはいけない。つまり国ごとの標準時設定のルールは,随時変更されている。たとえば2010年3月28日,ロシア政府は標準時の数を11から9に減らした。そして今年2011年3月28日,夏時間を通年化する形でサマータイム制も全面廃止した。さらに同年9月,ウクライナ政府やベラルーシ政府もそれに追従し同様のルール変更をした。そのため現在,地図帳のタイムゾーンの図では,モスクワの標準時は,GMT+3と表記されているが,実際は+4という実態になっている。以前,2006年4月13日,スリランカ政府が標準時を+6から,インドと同じ+5時間30分に変更したが,この時も地図帳の図がそのままでは使えなくなった。したがって,地図帳のタイムゾーンの図や,デイライトセイビングタイムの図を使う場合には,そのような大きな変更がないか事前に情報収集する必要がある。

@最新の タイムゾーンマップの入手

 まずタイムゾーンマップや,サマータイム実施地域まマップし,下のようなサイトからアクセスできる。

まずWorldTimeZone.comというサイトでは,メインページで最新のタイムゾーンマップを見ることができる。

また同じ,WorldTimeZone.comというサイトの中の「デイライトセイビングタイム」というページでは,最新のサマータイムマップを見ることができる。地図は右クリックで保存でき,授業素材としても活用可能である。

米国海軍天文台(USNO)のサイト内にある World Time Zone Map(世界のタイムゾーンマップ)というページでは,イギリス水路部HM航海暦局が制作した「最新のタイムゾーンマップ」が,pdf形式およびpng形式で入手できる。マップの中の記号が,省略されすぎていて読み取りが煩雑な恨みはあるが,有効な素材の一つである。

A タイムゾーンの更新情報の入手

 またタイムゾーンの最新の更新情報については,time and date.comというサイト内の「タイムゾーンのニュース」で容易にに入手できる。このサイト自体は,英文サイトではあるがGoogle翻訳などでサイト全体を翻訳すれば,比較的読み取りはやさしい。

 

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