D地理ゲームの活用

 

  • シリアスゲームの理解について

  • 一問一答形式の位置あてクイズ

  • 国際ボランティア参加型ゲーム

  • 衛星画像ゲーム

  • シミュレーションゲーム

1 シリアスゲーム(Serious Game)の理解について

「ゲーム脳」という言葉が普及している状況からみても,日本では,ゲームの教育利用については,エンターテイメント性ばかりを追求してしまう「遊び」になってしまうのではないかと懸念される先生方も多いと思う。しかし近年,欧米(アメリカ、イギリス、フランス、カナダなど)や日本の教育や医療の分野では,学習者の興味・関心の喚起,知識やスキルの習得,擬似体験,モチベーション維持を目的として,ゲームの積極利用をはかろうとする動きがすすんでいる。そしてそれは「シリアスゲームゲーム(Serious Game)」という概念で知られるようになってきている。実は日本もすでにニンテンドーDSの実用系ソフトやWiiの『Wii Fit』などのソフト開発の面では,シリアスゲーム先進国である。ただし個人的な考えでは,地理の分野においては後進国であると思う。そこで今回は,日本の高校地理でも活用可能な海外サイトの幾つかを紹介したい。なおその前に,それでもゲームなんて・・・という方は,シリアスゲーム理解のために以下の記事をご覧いただくとよいと思う。

●まずゲームに懐疑的な先生方は,Wikipediaにのっている「ゲーム脳」をみてくださいその非科学性・非論理性がなんとなくわかるのではないかと思います。

●「シリアスゲーム」最新記事一覧

●シリアスゲームの現状調査報告書(社団法人日本機械工業連合会)

●東大研究員がシリアスゲームの現状を報告、”本当のシリアスゲーム”を見抜くために

2 地図パズルゲームについて

 英文サイトの地理ゲームで高校地理の学習にも援用できそうなものには,パズル型のものが比較的多い。国や都市の位置・名称,あるいはランドマークの位置・名称・イメージなどの学習について,楽しみながら反復して習得していくというゲームである。欧米の学習サイトでは,児童・生徒の発達段階に応じて,難易度を変化させた地理ゲームが用意されているが,私が卓越していると考えるのは以下のようなものである。「地理月報」には紙面の都合で掲載できなかったものも含めて紹介したい。

1 Statetris

「mapmsg.com」という英文サイトの「Statetris」というページでは,「テトリスゲーム」の地図バージョンをオンラインで楽しむことができる。ここではアフリカ,ブラジル,中国,ヨーロッパ,フランス,ドイツ,イタリア,日本,オランダ,サウスカロライナ州,イギリス,アメリカ合衆国のバージョンが用意されている。ゲーム自体は単純で,画面の上から落ちてくる国や州を,下の白地図にあてはめていくゲームである。フランス・ドイツ・イタリアの州郡別のものもあるが,高校地理を勉強する高校生にすすめめられるのは,下のようなものだとおもわれる。とくにアフリカ,ヨーロッパ,日本のものが有用である。どうか下の和訳したリンクでトライしていただきたい。ただしただ都道府県によっては教育委員会のフィルタリング規制で,このゲームサイトが見られない場合もあるので,授業で活用したい場合には都道府県のネット管理者にブロック解除の申請,相談をする必要がある。

2 地図パズルのOwl and Mouse

Owl and Mouseという英文サイトは,オンラインで使用可能な多くの無料地図パズルを提供するサイトである。英語が苦手な人でもYahoo翻訳などを使えば,使い勝手にあまり問題はない。一般的な国名あてについての地図パズルが充実している。私は,とくにWorld Features(世界の河川・山脈・湖などの位置), World Monuments(世界各地のランドマーク)の位置を地図上でさがしていくパズルが,とくに授業への活用に関して有用性が高いと考える。他のゲームも,高校地理のさまざまな項目で活用が考えられる。どうか下の和訳したリンクでトライしていただきたい。

世界

地域

国単位

世界の大陸の位置 北アメリカの国の位置 アメリカ合衆国 の州位置
世界の河川・山脈・湖などの位置 南アメリカの国の位置 アメリカ合衆国の河川・山脈・湖などの位置
世界各地のランドマーク 中央アメリカの国の位置 カナダの州位置
  アジアの国の位置 中国の省・自治区などの位置
  東南アジア、オーストラリアの国の位置  
  アジアの諸島の位置  
  中東地の国の位置  
  ヨーロッパの国の位置  
  アフリカの国の位置  

※「翻訳リンク」といった,このような表現形態で紹介してよいのかわからないので,ゲーム管理者に確認します。

3 Sheppard Software のGeographyGame

アメリカの「Sheppard Software」という教育用ゲームを制作・販売している企業のサイトは,オンラインで利用できる複数分野の教育用ゲームを無償で一般公開している。公開されているゲームは,地理学,数学,動物,科学など多分野にわたっているだけでなく,非常に多くレベル(レベル1〜8まで)あるいは発達段階に応じたゲームが用意されている。 とくにこの中のGeographyGameは,英文サイトではあるが,Google翻訳などの機能を援用すれば,高校生程度の英語力があれば,取り組める内容になっている。どうか下の和訳したリンクでトライしていただきたい。 それぞれの地域のゲームは,首都,国,景観の3項目について用意されている。

地域ごとのゲーム(レベル1〜レベル8まで)

アフリカの地理 アジアの地理 カナダの地理
カリブ地理 ヨーロッパ地理
メキシコの地理
中東地理 オセアニア地理 中南米地理ゲーム
米国地理 世界地理
 

たとえばヨーロッパ地理のところで「国(Countries)」の項目のところで下のようなレベル3のゲームを選択する。

すると下のような,それぞれの国のピースを白地図のところにマウスでドラッグしていくパズルゲームが展開される。これなど楽しみながらヨーロッパの国名と位置を覚えられる大変有用なゲームである。

3 一問一答形式の位置あてクイズ

 ここでは「地理月報」には紙面の都合で掲載できなかった「一問一答形式の位置あてクイズ」のものを紹介しておきたい。

1 Ilike2learn.com

「Iilike2learn.com」いう英文サイトは,実に多様な地名テストにチャレンジできるサイトである。国名,大陸名,山脈名,河川・湖沼名など簡単なテストが用意されている。数が非常に豊富であるため,高校地理のさまざまな項目で活用が考えられる。どうか下の和訳したリンクでトライしていただきたい。

世界

アジア

アメリカ

ヨーロッパ

アフリカ

オセアニア・カリブ

世界の大陸 アジア地図 北アメリカ地図 ヨーロッパ地図(ハード) アフリカの水域 オセアニア地図
面積が大きい島 アジアの首都 北アメリカの首都 ヨーロッパ地図(簡単) アフリカの湖 オーストラリア地図
大陸と島々 アジアの河川・湖・海 北アメリカの湖・川・湾・海 東ヨーロッパの地図 アフリカ河川 カリブ海地図
世界の大洋と海 アジアの河川 北アメリカの河川 西ヨーロッパの地図 アフリカの海  
大西洋 アジアの湖 北アメリカの湖 ヨーロッパの首都 北アフリカ地図  
インド洋 アジアの海 北アメリカの山脈 ヨーロッパの河川・湖・海・湾 中央アフリカ地図  
世界最長の川 アジアの山 中南米地図 ヨーロッパの湖 南部アフリカ地図  
世界の湖沼 アジアの山脈 中南米の首都 ヨーロッパの河川 アフリカの首都  
世界の山脈 中東地図 南アメリカの河川・湖・海 ヨーロッパの海    
世界の高い山 中東の首都 アメリカの州 ヨーロッパの山脈    
  中東の河川・湖・海 アメリカの州都 ドイツ    
  中東の河川・湖沼 カナダの州 ロシアの言語    
  中東の海 カナダの州都      
  中東の山脈        

※「翻訳リンク」といった,このような表現形態で紹介してよいのかわからないので,ゲーム管理者に確認します。

4 国際ボランティア参加型の地図ゲーム

 ゲームはただの地名を覚えるだけのツールではない。現在,世界最大の食料援助組織であるWFPなども「国際ボランティア参加型の地図ゲーム」がサイトを提供している。下のようなサイトである。これを読まれている方のなかにもボランティアとゲームをリンクさせるに違和感をもたれる方もいると思う。しかしゲームを使うといったレベルの高い教育の機会を得られるような「先進国に暮らす生徒たち」に,そうした教育も受けられず貧困と飢餓に苦しむ人々のことを一瞬でも考えさせられる機会が与えられるという点で,こうしたゲームの意義は大きいと思う。なおWFPが制作協力しているFree Riceでは,こうしたシリアスゲームによって世界の子供たちの教育をバックアップしつつ,その行為をスポンサー企業に見せることで,そこからの寄付を引き出すことも目的となっている。

1 世界の飢餓を救う「Free Rice」

この英文サイトはいろいろな問題に答えて正解するだけで,世界中の飢餓に苦しむ人々に米が寄付されるというサイトである。様々な分野の問題があるが,中にはGEOGRAPHY (Identify Countries on the Map /国の位置確認,World Capitals /世界の首都)という項目もある。

Free poverty.comのゲームで水不足地域を救う

Free poverty.comというサイトは,「Free rice」同様,都市(英語)の位置あてに1回成功するたびに,水不足地域にコップ10杯の水が寄付されるというオンラインゲームである。

 

5 衛星画像ゲーム

 近年の地理的なゲームの中には,非常に現代的な「衛星画像を使ったゲーム」もある。地形学習の導入部分において,生徒の興味付けを行う際に有用であると考える。視覚的インパクトが期待できるだけに,その興味付けの効果は大いに期待できる。

The Google Maps Quizの「Where is that?」

Where is that?は,Mindpicnicという無料のオンライン学習サイトにあるゲームで,拡大表示されたGoogle Mapの衛星画像が,世界地図上のどこの画像なのかを地図上で探すゲームである。かなり難易度は高いが,海岸線や湖の輪郭線,地形をヒントに場所を考えるゲームである。

6 シュミレーションゲーム

あくまでも個人的見解であるが,現在,地理教育への援用が可能なゲームの中身には「地名学習」用のものが多いと思う。しかし近年,下のFood Forceのように,食料援助組織の活動について擬似体験できるような,より高度なものもあらわれている。このようなシュミレーションゲームは,ボランティア活動など普段自分たちが体験できない活動を擬似体験できるものであり,授業への活用に対しては非常に大きな効用があると思われる。

Food Force

WFPでは,活動の理解と国際援助の精神の啓蒙を考え,2005年から食糧援助シュミレーションゲーム「Food Force」を,公式ホームページから無料提供している。現在,世界のユーザーは数百万人という規模に達している。以下は,Food Forceを紹介するために以前私が作った自作資料であるがこれを見ると概要はつかめると思う。

 

COPYRIGHT(C)2009 Takashi Tanaka  All Rights Reserved.

inserted by FC2 system